「社会的廃棄生物『オタク』をうまく金蔓とし、生かさず殺さず搾り取る方法」
図書館の「マーケティング」の棚をぶらぶら眺めていたら、こんな本をみつけた。
- 作者: 高安正明
- 出版社/メーカー: オーエス出版
- 発売日: 2004/04/21
- メディア: 単行本(ソフトカバー)
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トンデモすぎる
内容としてはこの記事のタイトル通り。いや、マジで。
「社会的廃棄生物『オタク』をうまく金蔓とし、生かさず殺さず搾り取る方法」
ビジネス書としてみるなら、たとえば野村総研が「オタク市場」の研究をしてたみたいに、裏付けとしての数字や事例がでてきても良さそうなもんだが、具体的な数字はほとんどでてこない。
ところが、かなり詳しい記述が多く、妙に説得力がある割に、視野狭錯気味というか、「それガイドライン板からのコピペ?」的な、微妙な(しかしお約束的な)思い込みがちらほらあって「ちょwwちょっとまてwww」と止めに入りたくなる。
P84.
オタクはアキバに行くのに使用する交通機関は99%以上「電車」である。これは(中略)もともとオタクが運転免許証を持っていないのが主因となる。
(中略)
しかし「現役オタク」の場合、バイクブームが去ってしまった後のこともあり、9割以上が運転免許を所有していない。
じゃぁ「痛車」は免許を持ってる残りの1割なのか。それにしては多すぎないか? ちなみに「痛車」はそれほど新しいジャンルではなく、少なくともこの本が出版された2004年ごろにはすでにあった。
P87.
ただしパソコンを持っているからといって、パソコンを操作する技術に長けているわけではない。
(中略)
パソコンに限らず、オタクは機械一般の操作を苦手としている。
(中略)
相手が機械であろうと人間であろうと、自らが「働きかける」ことはオタクの最も苦手とするところだ。
いやいや・・・理系職で飯食ってるヲタはどうなるんだ。
それに「アキバ系」「オタク」といっても「萌」「ガンダム」、ぎりぎり「特撮」までは触れているが、「鉄」「模型」みたいな古来からのジャンルにはノータッチ、それどころか「PC*1」は『オタクではない』と言い切ってしまっているところも気になった。
そもそも、この本の中でのヲタの定義があまりにも斜め上過ぎる。
- 40代以上・・・・・・・非オタク。
- 30代以下・・・・・・・全部オタク。
まずこの時点で「おいおい」だが、次がさらに酷い。
- オタク
- 非オタク
- 上記オタク以外。PCマニア、鉄、模型などもここ。
「30代以下は全部ヲタ」と初めにいいつつ「PC関係はオタじゃない」と定義する。イミフ。
「オタク」=消費型ヲタ・ニート・非正社員のみと限定。
つまり「アキバ系」=社会不適合者としたいらしい。
どう考えても老害どもが喜びそうな定義付けです。ほんとうにあr(ry
何者?
はじめはよくあるドンデモ系にありがちな「タイトルで釣る」タイプのビジネス書だと思っていたので、
「ビジネス書をありがたがる読者層にはこういう書き方の方が喜ばれるんだろうか」
とか、
「この時期オタ・アキバ系=萌 だったから、ほかの系統を知らずにぱっと見だけで書いたんだろうな」
と、思っていたけど、それにしては心理面に詳しすぎるというか「中の人視点からの狭い範囲の常識」っぽすぎるように見えた。
で、この著者について調べてみた。
高安 正明
有限会社JCN代表取締役keyword:高安正明
見ての通り、「萌える○○辞典」なんかを出してる会社の代表。
なんのこたぁない、自分の商売のやり方をそのまま載せてるだけだった。自分の感性で商売して、それがうまくいってるもんだから、データがなくても詳しく書けてしまうと。前述のPC関連を『オタクではない』や『オタクは機械操作が苦手』といった、いくらなんでもそれは斜め上すぎだろう的書き方も、自分とその周囲のオタクだけを見て書いていると考えれば納得がいく。この様子だと自分とこのユーザのリサーチも大してやってないんじゃないだろうか。
最初から最後まで「ヲタども下等生物はこうやって扱う」的な上から目線で内容を書いていて、本文内ではっきりと「反オタク」を自称している。だが当の本人はエロラノベ書いて飯食ってたわけで、それは世間一般でいうところの「オタク」だから、同族嫌悪or自虐ネタということになる。
・・・もし本人がマジでオタなくエロラノベを書いていたなら、あまりにもオタニーズを解ってる一般人*2か、でなきゃゴーストライター*3だな。
著者紹介欄に自社サイトのURLや現在の事業を併記していないところを見ると、著者の主な飯のタネであるヲタに対してのある程度の防衛線を張っているのかもしれない(あまり意味はないが)。
著者の名前で検索すると、どうも営業活動でミスったらしく、VIPPER達に祭られている。
本書にも
P135.
オタクは性的には潔癖なのだが、同様に他人の金銭スキャンダルにも非常に厳しい態度を取る。
(中略)
こうしたネガティブキャンペーンによって商品の売り上げを落とすことだけは確実に実行できるのだ。
とある。ヲタ達に対してはうまくごまかせたのかもしれないが、「嫌儲」であるVIPPERには通用しなかったようだ。ご愁傷様。